巨人のすねをかじる

心理学徒だったものの,読書日記的なものです。

書評:『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』

読書レコード

  • 書誌名:さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
  • 著者名:水田カビ
  • 発刊年:22016年12月17日 第8刷
  • 媒体種:書籍
  • 開始日:2016/12/23
  • 読了日:2016/12/23

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

800字感想コーナー

この漫画,タイトルこそぶっ飛んでいるように思われるますが,私を含む多くの人間が抱える内的な問題をきっちりと描き出しているように感じます。私が本書を読んで浮かんできた言葉は「承認欲求」と「自己肯定」でした。作中にはハッとさせられる言葉がいくつかあったので引用いたします。

  • “私… 自分から全然大事にされてない…!!”
  • “自分で自分を大切にしたい 自分の気持ちをわかるようになりたい…!!”
  • “私が私の為に考え行動できるようになるという事は 自分の行動を決める権利を勝ち取り続けるという事なのか”

こうした多くの気付きがかわいらしい絵とともに展開されている本作。自分のことをしっかりと認識して,作品として表現するまで考え抜いたことに対して,筆者の永田カビさんを尊敬するばかりです。

自分を大事にする,肯定できるようになるためには自己効力感があるときっと良いのでしょう。そして,自己効力感を得るのに他者の目は効果的な場合が多いです。とはいえ,他者の評価に自分の価値をゆだねてしまうと心が不健全になりやすいわけで,とかくこの世は難しい……。そんなバランスの中,不健全でない「甘い蜜」を見つけられると幸せに生きられるのかもしれないですね。

筆者が抱えた孤独はきっと,現代人の多くがどこかで抱えているものだと私は思っています。そのひとつの解決策としてのレズ風俗というのは実に独創的でした(というかレズ風俗の存在を知りませんでした)。今後とも筆者のご活躍をフォローしていきたいところです。

あと,個人的に興味深いと思ったのは,できるだけ隠しておきたいような大きなレベルの自分の本心を知りたいと考えた結果に「性的な事」が出てきたことでしょうか。筆者においては子供であるために目を背けなければいけないもの,と否定した結果かえってその存在が大きく意識されることとなったようですが,このあたりフロイト先生はどう思うんでしょうね。

関連書籍

読んだ本の中で,なんとなく関連しそうだなと思われた本をいくつかピックアップします。

承認をめぐる病 (ちくま文庫 さ 29-8)

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[新版]「自分の居場所」をつくる心理学

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