巨人のすねをかじる

心理学徒だったものの,読書日記的なものです。

書評:『スーツに効く筋トレ』

今回読んだ本

  • 書誌名:スーツに効く筋トレ
  • 著者名:Testosterone
  • 発刊年:2016年12月21日 第1刷
  • 媒体種:新書
  • 開始日:2017/1/10
  • 読了日:2017/1/10

スーツに効く筋トレ (星海社新書)

スーツに効く筋トレ (星海社新書)

800字感想コーナー

『筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法』の著者であるTestosterone氏の著作ですね。 近日書評をかければ,と思っておりますが,氏のこの本を読んで大きく感銘を受けたので,気づいたら2017年1月15日現在出ている3冊の本は全て買いそろえていました(笑)

ある種自己啓発的なようにも思われる本ですが,自信満々に断言されるとなぜか惹きこまれてしまう。 特に,きれいに鍛えられた身体でこそ映えるスーツという服装を普段から身に着けている私たちにとっては,筋トレが見た目に効く,さらにビジネススキルとしても役に立つ,なんて話を聞いてしまうと身体がそわそわして仕方ない!というわけです。

私も氏の最強のソリューション本を読んで筋トレを始めたクチですが,この本は既に筋トレに手を付けた初心者トレーニーの人にも嬉しい要素があります。 以下に,箇条書きにしてみました。

  • 一般的に(特に欧米で)ガリガリの人がどう見られるか,太った人がどう見られるかを列挙してある
  • いくつかの筋トレメニューについて,QRコードから動画が見られる
  • 食事の参考メニューや,トレーニング・ダイエット時に口にするとよい食品などが書いてある
  • マクロ栄養素とカロリーのおおまかな計算式などがある

氏の運営するサイト,「DIET GENIUS」に記載のある内容も多いですが,本を読んでからさらに調べる必要がなく,この本一冊である程度簡潔するというのはそれだけで価値があると思います。

新書サイズなので,ポケットに一冊入れて,筋トレに励むためにアゲていくのには良いのではないでしょうか。

関連書籍

筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法

筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法

人生の99.9%の問題は、筋トレで解決できる!

人生の99.9%の問題は、筋トレで解決できる!

書評:『自分を操る超集中力』

今回読んだ本

  • 書誌名:自分を操る超集中力
  • 著者名:メンタリストDaiGo
  • 発刊年:2016年9月16日 第7刷
  • 媒体種:紙書籍
  • 開始日:不明
  • 読了日:不明

自分を操る超集中力

自分を操る超集中力

800字感想コーナー

誤解を恐れず端的に言うと,ライフハック本にエビデンスを付けたような本でした。

読書家で有名なDaiGoさんが心理学を中心とした諸領域の本を読み,実験などで実証されている現象のうち,日常生活に活かすことのできそうな知見を拾い集めてきたという感じでしょうか。 それら,集めてきたTipsを「集中力」というトピックに合わせてまとめ直したのが本書という解釈です。

ここでは集中力をウィルパワーと読み替えて,ウィルパワーが筋肉と同じで使えば消耗するものの鍛えられること,ウィルパワーを十全に使い倒すためには鍛えるか節約するかの方略をとる必要があることが述べられています。集中力=ウィルパワーという図式が厳密に,心理学的に正しいのか,そのあたりがあいまいに論じられていないかは一考の余地があるとは思いますが。

とはいえ,すぐに日々の生活に活かせる数々の作戦はありがたいですし,この本の大部分が参考にしているであろう『意志力の科学』などは普通に生きていたらあまり手に取らないと思うので,本書のようなキャッチーでかつ心理学の知見を活かせるものには一定の価値があると思います。

本書からの主たる学びとしては,次のようなものがあるでしょう。

  • 集中力のドライバーとなる場所,姿勢,食事,感情,習慣,運動,瞑想を効果的に日々の生活に組み入れながら,意志力を必要なところに割けるよう節約できるところは節約するとよい
  • 生物としての人体のリズムを把握して,時間設計をしっかり行うことでパフォーマンスをより大きくすることができる
  • 集中できないことは必ずしも自分のせいではなく,適切な処置を行えば集中力を高めることができる

いずれも一定の効果が示された知見ですので,ただのライフハックと斜に構えて切り捨てず,有効活用していきたいですね。

関連書籍

WILLPOWER 意志力の科学

WILLPOWER 意志力の科学

書評:『欠乏の行動経済学 いつも「時間がない」あなたに』

今回読んだ本

  • 書誌名:欠乏の行動経済学 いつも「時間がない」あなたに
  • 著者名:センディル・ムッライナタン & エルダー・シャフィール
  • 発刊年:初版 2015年
  • 媒体種:紙書籍
  • 開始日:不明
  • 読了日:不明

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学

800字感想コーナー

認知心理学行動経済学,それぞれの領域で一流の研究者が各々の英知を組み合わせて作り上げたひとつの芸術品。 この本で語られている「欠乏」という概念とそれに対する対処法は,本の帯に書いてある通り,あらゆる文化圏,あらゆる資源に当てはめることのできる優れたものであると思います。

本書では,ある資源が「欠乏」していると意識されるとき,欠乏した状態でもなんとか目標を達成しなければと他のものをシャットアウトする,「トンネリング」と呼ばれる一種の過集中状態になってしまうという現象が述べられています。

ことわざでは昔から「貧すれば鈍する」と言いますが,まさにその通りなわけです。

これまで貧困は,貯蓄や節約をしない,プログラムに参加しないなど,当人の能力の怠慢で能力の問題だと思われがちでした。「鈍しているから貧する」という世界観ですね。 一方で本書は,貧しているときにはその資源の貧困で頭の中がいっぱいになってしまい,脳内資源を一定の割合で奪われてしまっているため認知能力が下がることを主張しており,文字通り「貧すれば,鈍してしまう」という世界観なわけです。

お金だけでなく,時間などあらゆる資源に適用できる話であるというところが,この「欠乏」のメカニズムの優れた点であると思います。 そして,著者らは欠乏をきちんと理解することで人は自分の環境を「耐欠乏性」にできるという示唆を与えてくれています。

例えば貧困の原因はえてして「豊かさ」にあるということ,1回選択してしまえば自動的に欠乏を回避できるような仕組みを構築すること,など,アクションにも移れるという意味で素晴らしい一冊でした。

時間やお金が足りないと頭を悩ませることは少なくありませんでしたが,こうしたメカニズムを理解して生きると違った景色が見えるかもしれませんね。 仕事をしているときの「頭の中のリソース」もきちんと使い道を意識しなければと考えさせられました。

書評:『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』

読書レコード

  • 書誌名:さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
  • 著者名:水田カビ
  • 発刊年:22016年12月17日 第8刷
  • 媒体種:書籍
  • 開始日:2016/12/23
  • 読了日:2016/12/23

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

800字感想コーナー

この漫画,タイトルこそぶっ飛んでいるように思われるますが,私を含む多くの人間が抱える内的な問題をきっちりと描き出しているように感じます。私が本書を読んで浮かんできた言葉は「承認欲求」と「自己肯定」でした。作中にはハッとさせられる言葉がいくつかあったので引用いたします。

  • “私… 自分から全然大事にされてない…!!”
  • “自分で自分を大切にしたい 自分の気持ちをわかるようになりたい…!!”
  • “私が私の為に考え行動できるようになるという事は 自分の行動を決める権利を勝ち取り続けるという事なのか”

こうした多くの気付きがかわいらしい絵とともに展開されている本作。自分のことをしっかりと認識して,作品として表現するまで考え抜いたことに対して,筆者の永田カビさんを尊敬するばかりです。

自分を大事にする,肯定できるようになるためには自己効力感があるときっと良いのでしょう。そして,自己効力感を得るのに他者の目は効果的な場合が多いです。とはいえ,他者の評価に自分の価値をゆだねてしまうと心が不健全になりやすいわけで,とかくこの世は難しい……。そんなバランスの中,不健全でない「甘い蜜」を見つけられると幸せに生きられるのかもしれないですね。

筆者が抱えた孤独はきっと,現代人の多くがどこかで抱えているものだと私は思っています。そのひとつの解決策としてのレズ風俗というのは実に独創的でした(というかレズ風俗の存在を知りませんでした)。今後とも筆者のご活躍をフォローしていきたいところです。

あと,個人的に興味深いと思ったのは,できるだけ隠しておきたいような大きなレベルの自分の本心を知りたいと考えた結果に「性的な事」が出てきたことでしょうか。筆者においては子供であるために目を背けなければいけないもの,と否定した結果かえってその存在が大きく意識されることとなったようですが,このあたりフロイト先生はどう思うんでしょうね。

関連書籍

読んだ本の中で,なんとなく関連しそうだなと思われた本をいくつかピックアップします。

承認をめぐる病 (ちくま文庫 さ 29-8)

承認をめぐる病 (ちくま文庫 さ 29-8)

[新版]「自分の居場所」をつくる心理学

[新版]「自分の居場所」をつくる心理学